レヴィが提供するシステムデザインツール「Balus」は、創業メンバーが教鞭をとっている大阪府立大学や鳥取大学の工学教育の中で積極的に活用されています。具体的には、
- 学生による小型人工衛星開発やロボット開発の活動
- 実践的な活動を伴うプロジェクト型の授業
- システム設計に関する特別講義
- プログラミングの授業
など様々な場面で登場します。今回の記事ではその中でも、鳥取大学におけるプロジェクト型の授業での利用例について簡単に紹介したいと思います。
授業の概要
今回の例として紹介する授業は、鳥取大学工学部のPBL型授業「実践プロジェクト」です。PBLというのはProject-Based Learning(課題解決型授業)の略称です。学生自身が自ら主体的に課題解決に取り組む中で様々な知識やスキルを習得し、それらを応用する能力を育成するような教育活動のことを指します。実践プロジェクトでは、協力企業や行政機関などから与えられる課題に受講生グループが全力で取り組みます。
2019年度の実践プロジェクトのテーマは「スマートグラスを活用した観光サービスの開発」でした。セイコーエプソン株式会社様やDMO麒麟のまち観光局様らの協力のもと、AR技術を用いた観光サービスの企画、試作コンテンツの制作、それを用いた実証実験などに取り組みました。テーマや授業の進行に関する詳細は下記のページをご覧下さい。
https://site.icee.tottori-u.ac.jp/lecture/pj2019a/site.icee.tottori-u.ac.jp
授業の様子
上記の説明だけだと授業やプロジェクトの具体的な様子がイメージできないと思いますので、どんな感じだったのかを写真を交えて紹介します。
授業の冒頭では、ゲーミフィケーション教材「ペジテの自転車」をプレイして製品開発の全体像を体験しました。ペジテの自転車も、レヴィが開発した教材です。詳しくはこちらの発表資料をご覧下さい。
プロジェクト初期の活動としては、(協力企業からの)課題の提示、課題の分析、アイデア出しなどがありますが、今回の授業ではそれらをアイデアソンイベントとして集中的に実施しました。
アイデアを出した後は、それらを実現性のある企画へとまとめるための活動に取り組みます。サービスを設計し、提案としてまとめていきました。
どのようなサービスを開発するかが決まっても、それが本当に顧客から求められるのかどうかは分かりません。そこでこの授業では、提案するサービスのMVP(Minimum Viable Product:価値を感じてもらえる最小限の機能を持った試作)を開発し、鳥取砂丘に来た観光客を対象とした価値検証を行いました。
Balusの活用
上記のような形で進めた授業において、受講生同士や受講生と教員・協力企業の間のコミュニケーション、プロジェクトの進め方に関する合意形成、プロジェクトの状況共有、資料やデータの配布・共有などのシーンでBalusを活用しました。ここからはBalusの画面キャプチャでその様子を紹介します。
まずはダッシュボードです。実践プロジェクトというBalusグループをつくって、その中に各チーム(受講生をA~Dの4チームに分けました)のプロジェクトがあるという形にしました。ダッシュボードからは、Balusと併用するGoogle Driveの各フォルダへアクセスできるようになっています。
各チームは活動計画をつくって、やるべきこととその期間をプロジェクトのアクションとして登録します。この作業により、チームの中で今回のプロジェクトの進め方について合意を形成することができます。
それぞれのアクションには、その作業を進める上での前提となるデータ(入力)と、その作業の結果として期待されている成果(出力)を設定することができます。これにより、何をアウトプットしなければならないかを意識しながら活動を進めることができます。
Balusの大きな特徴の一つは、アクションと紐付けたコミュニケーションができることです。アクションと関連づけながらメッセージをやりとりすることで、コミュニケーション履歴が自然と構造化されていきます。授業の中ではチームメンバー同士(受講生同士)の間はもちろん、受講生と教員の間や、受講生と協力企業の間のコミュニケーションもBalus上で行いました。
各学生チームの活動だけでなく、授業全体の進行や資料配布にもBalusを使いました。Balus本来の使い方とは少しズレてしまいますが、授業全体の日程の示した上で各週のアナウンスや資料共有ができてなかなか便利です。
システムモデリング
ここまでに紹介した2019年度の実践プロジェクトではあまり使用しませんでしたが、テーマによってはBalusのシステムモデリングの機能をフル活用することもあります。
例として、「小学生向けプログラミング学習教材の開発」をテーマとしたときのBalusの利用画面を掲載しておきます。
プロジェクトの結果
Balusを活用することで、各学生チームは活発なコミュニケーションや合意形成を行いながらプロジェクトを進めることができました。また、4つのチームプロジェクトが同時に進行していくなかで、教員は各チームの状況を把握したり、全体に対して進行や資料を簡単に共有することができたりして、授業の運営がとてもスムーズになりました。
その結果、どのチームもそれぞれの提案と試作コンテンツを制作することができ、砂丘での価値検証実験を完了することができました。「ストーリーに沿って観光地を巡るシナリオ型ARゲーム」や「夜の砂丘を舞台にした観光サービスで宿泊客を増やすビジネスモデル」などのユニークなサービスが提案され、協力企業への成果報告会も行われました。
https://site.icee.tottori-u.ac.jp/home/2020/01/16/pj_presentation/site.icee.tottori-u.ac.jp
今後の可能性
現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のために多くの大学で授業が遠隔実施となっています。一般的なレクチャー型の授業であればオンラインでの実施が可能ですが、PBLのような実践型授業の遠隔実施は難しい状況にあります。
今回紹介した2019年度の授業は遠隔で実施したわけではありませんが、Balusを導入することで授業時間の外でのプロジェクト活動や学習活動が活発になるとともに、教員や協力者は活動の状況を随時把握することができました。このような方法が、実践型教育の遠隔化につながるかもしれません。大学の授業だけでなく、企業における人材育成にも同じことが言えます。同じような課題を抱えている方や、ご関心のある方は、ぜひお気軽にご連絡下さい。
この記事で紹介した授業以外にも、様々な形の教育でBalusを活用しています。また機会があれば紹介したいと思います。
※掲載されているBalusの画面や機能は今後変更される場合があります。