株式会社レヴィ ブログ

システムデザインで価値を生み出す、株式会社レヴィの公式ブログです。

羅針盤 vol.3 「ステークホルダ」

相手を黙らせたからといって、意見を変えさせたわけではない。
ジョージ・バーナード・ショー
(19~20世紀イギリスの劇作家・小説家、ノーベル文学賞受賞者、1856~1950)

 こんにちは、システムデザイン研究所(SDL)のともです。 旅はいいものですが、計画から実行に至るまでトラブルもつきもの。しかし、最近ではフライトや宿泊の予約、ライドシェアなど、さまざまなサービスが登場し凄まじい変貌を遂げています*1。今回はその中で、最近あったフライト体験のことを書きたいと思います。

 先日、出張で早朝カリフォルニア州のサンフランシスコ(SFO)を出発し、ペンシルバニア州のピッツバーグ(PIT)に移動しました。その際に、コロラド州デンバー(DEN)での乗り換え便に間に合わず(ミスコネクト)旅程変更となりました。

 それは早朝のSFO出発前の機内アナウンスでわかりました。 「機体修理のため出発が1時間半程度遅れます。ミスコネクトしてしまうお客様はアプリを見てもらうと自動的に振替便が表示されますのでそちらをご参照ください。一旦飛行機を降りてカウンターでご相談いただいても構いません。」 居眠り気味だったのですが、アプリを開いてみると確かに自動的に振り替えられた便の情報が出ています。さらにそれだけではなく、「他のオプションを探す」という欄もあり、ユーザーが自身の判断で他の便への変更を加えることができるようにもなっています。いくつかオプションを見てみたところ、夕方6時ごろ発のPIT直行便があります。ここまで情報を収集し、飛行機の選択はDENに到着してからにしようと決め、眠りにつきました。

 DEN到着後、そのままラウンジに向かい、ラウンジ内のコンシェルジェの方に相談します。
「おはようございます。ミスコネクトしたのです。助けてもらえますか。」
「それはお気の毒に。はい、もちろんです。今のところEWR経由便で、11時に出る便にアサインされていますね。」
「また一回乗り換えで、っていうのは避けたいなあって思います。」
「そうですよね。夕方5時50分にPITへの直行便があります。Layoverが8時間近くになりますけどいかがですか?」
「はい。直行便にして、出発まではラウンジで過ごします。」
「ありがとうございます。ではこれからプロセスしますね。」
「今回はご不便をおかけしたということで、Travel Certificateをお送りしようと思うのですがよろしいですか?」
「じゃあマイレージでください。」
「わかりました」
「(ニヤリと笑いつつ)さらにお詫びとして、ミールバウチャーをお渡ししますね(そしてウインク)。」
「ありがとうございます。」

なんだかいつにない爽快感です(笑)。

 この体験を、システム工学的な見地から見てみましょう。フライト運行管理システムの中では、空港管制、航空会社、パイロットやクルーなど、システムとの利害関係にある者(ステークホルダ)との関係をしっかりと把握する必要があります。かつてのシステムでは、ミスコネクトが生じた際には航空会社からの一方的な通告が乗客になされるものであったため、乗客はステークホルダとしては十分な考慮をされていなかったものだと言えます。しかし、システムの改善が進み、ステークホルダとして乗客はきちんと定義されるようになりました。

 アプリを通じて、カスタマーは自分の意思を反映する機会を増やすことができるようになりました。行き先にもよりますが、結構な選択肢が現れます。相当数の経由地候補が提供されます。これによって乗客は自分の都合に合わせてかなりアレンジが可能になります。どう選択するか、で悩むことも起こり得ますが、ここもうまく設計されています。前述したように、

a.自動的にフライトアサインされている
b.アプリ上でリブックすることも可能
c.私がとったようにスタッフに相談してリブックすることも可能

となっています。単純なシステムの更新ではなく、ステークホルダの再定義を行ったDXの好例と言えます。

「旅」というシステムに関係するステークホルダのことを考えながら飛行機に乗ったり、温泉に入ったりするのもいいかもしれませんね。

追記:

 私が最終的にリブックをオンライン一本でやらないのは理由があります。いかに、ナイスな感じでコンシェルジェと話をし、いい経路を導き出せるかを楽しむためです。本来、飛行機が遅延することは損失でしかありませんが、その決断に至るには何らかのことを諦めなければなりません。それを飛び越えるには、いわば「ナッシュ均衡からパレート最適に至る」ためのカタリストを見つける必要があります。いい会話やバウチャーがつくと、パレート最適に向かい易くなります。ちなみにコンシェルジェが最後にくれたバウチャーは、彼女からのプレゼントだと思っています(笑)。ナッシュ均衡の話はまた別途詳しくご紹介したいと思います。