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サルでもわかるNASA式システム開発 第3話 「ガントチャートには早すぎたんだ」

この記事では、サルでもわかるNASAシステム開発」ガイドブックのポイントを抜粋して紹介しています。全文をお読みになりたいかたはこちらから無料ダウンロードしていただけます。

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個にして全。全にして個。

「腐ってやがる・・・早すぎたんだ」

映画「風の谷のナウシカ」でトルメキア帝国の軍参謀クロトワが朽ちていく巨神兵の姿を見て発した言葉です。

ガントチャートも同様で、成熟前に目覚めさせると、せっかくの大作も崩れ落ちていきます。

腐らない計画を作るためには、どうしたら良いのでしょうか?

技術計画づくりのコツもNASAのハンドブックに載っています。

原文のままだと少し難しいので、意訳して転載します。

  1. ガントチャート的な計画を立てる前に、プロダクトのあるべき姿を表した樹形図(Product Breakdown Structure)を描けるくらいまで、時間をかけてプロダクトをに対する理解を深めましょう。技術の開発と検証に必要な時間を見積り、作業の依存関係を明確にし、設備や予算などのリソースの制約をリストアップして、計画を立てるために必要な情報を整理しましょう。
  2. プロダクトを分割し、分担して開発が進められるように、分割の境界(インターフェース)を明確にしましょう。インターフェースを修正しないといけないときの対処法も合わせて決めておきましょう。
  3. 何かを変更しないといけないときに、その変更の影響範囲がどの程度なのかを理解するために、チームの中で合意されているプロダクトの情報(コンフィギュレーション)を管理しましょう。
  4. 重要かつ価値ある指摘を集められる様に、マイルストーンになるレビューを実施しましょう。レビューは、通過儀礼的に行えば良いものではなく、実施の基準を満たした時のみ、実施されるものであるべきです。
  5. 分析結果に影響を与えるバイアス、仮定、および制約を理解しましょう。
  6. 状況の変化に対して、分析結果の見直しと分析のやり直しをいつするべきかを把握できるように、すべての分析は、コンフィギュレーション管理の下に置きましょう。

このうち、特に大切なのが、「PBS (Product Breakdown Structure)」と「コンフィギュレーション」です。

PBSは、プロダクトを要素に分解したものです。

例えば自転車を例にとると、下図のようになります。

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自転車のPBS

自転車の要素に分解するためには、まず自転車の機能を理解する必要があります。

また、機能を定義するには、自転車に対する要求や規制、ユーザーの使い方に対する理解が必要です。

つまり、様々な視点からプロダクトを眺め、理解しなければ、プロダクトを要素に分割することはできず、PBSを描くことはできません。

この時重要となってくるのが、システム思考です。

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様々な視点でシステムを観る

そして、ガントチャートの一列目に並ぶ作業の同期ポイントは、多くの場合、PBSの要素を統合するタイミングになります。 したがって、ガントチャートを正しく作るためには、プロジェクトマネージャーがリソースやコストに頭を悩ませるだけでなく、PBSが必要になります。

なお、システム思考については、レヴィのWEBサイトでも解説しているので、興味のある方はそちらも合わせてご覧ください。

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コンフィギュレーションという言葉は、宇宙開発特有かもしれません。

プロジェクトを進めていくと、「どれが最新の要求リストなんだ?」や「この設計情報には最近の仕様変更が反映されているのだろうか?」といった疑問を持つことが少なくないと思いますが、これが「コンフィギュレーションが管理されていない」状態です。プロダクト開発に関わる全ての人が拠り所にできる、合意され、管理されている設計情報の集まりのことをコンフィギュレーションといいます。

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技術的なベースラインの進化(NASA SE Handbookを元にレヴィが作成)

コンフィギュレーションの管理についても、ハンドブックには説明があるのですが、長くなるので、それは別の機会に回します。

重要なのは、上のコツにもあるように、コンフィギュレーションを管理することで、何か変更が生じたときに、その影響範囲を迅速に分析できるようになることです。

刻一刻と状況が変化するときこそ、コンフィギュレーション管理という、腰を重くするような活動が重要になるというのは、面白いものですね。

このように、NASAのSystems Engineering Handbookには、プロジェクトを走らせるための様々な含蓄が随所に述べられています。

ガントチャートを引く前に、プロダクトのことを理解するための時間を十分に確保しましょうというのは、宇宙開発以外でも有効なやり方なのではないかと思います。

次回は、「プロダクトのことを理解するための時間を十分に確保すること」がなぜ大切なのかについて書きたいと思います。

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