株式会社レヴィ ブログ

システムデザインで価値を生み出す、株式会社レヴィの公式ブログです。

複雑な課題を解決するヒントがみつかる。システム思考の実践型フレームワーク 「システミング」 とは?

最近、社会の状況を表現する際にVUCA (Volatility: 変動性、Uncertainty: 不確実性、Complexity: 複雑性、Ambiguity: 曖昧性)という言葉がよく使われます。経済のグローバル化、インターネットの急速な普及、新しいテクノロジーの進歩、価値観の多様化などの要因が絡み合って、世界は予測不可能で混沌とした状況になっています。

より不確実で複雑になるビジネス環境で、「わかりやすかった時代」と同じやりかたをしていては成長できない。 変化や複雑さに強い考え方、戦略、組織をどうつくるか。

そのヒントとして注目されているのが「システム思考」「システムデザイン」といった考え方です。これらの考え方は、ものづくりをする上で有用な視点や手段を多く提供してくれますが、多岐に渡る内容を体系的に理解して製品開発や問題解決の場で活用するには多くのトレーニングや長い実務経験が必要です。

そこでレヴィでは、システムデザインを上手く実践するためのメソッド、マインド、プロセスをまとめて「システミング」というフレームワークを構築しました。「システミング」は、難しいシステムズエンジニアリングのハードルを下げる「誰でも現場で使える」フレームワークです。

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この記事では、「システムミング」ガイドブックの内容の大事なところを簡単にご紹介します。「システミング」についての重要なキーワードをインプットして、ぜひ実践のヒントにしてください。

システミングとは?

システミングとは、レヴィが提案する「システムデザインを上手く実践するためのフレームワークのことです。

システミングは、宇宙開発やソフトウェア開発などの分野で発展してきたシステムズエンジニアリング(システム工学) のアプローチや方法論をベースにしています。他の分野に先駆けて培われてきた「複雑なものを上手くつくるための方法」がシステムズエンジニアリングです。

システムズエンジニアリングは有用な視点や手段を多く提供してくれますが、多岐に渡る内容を体系的に理解して製品開発や問題解決の場で活用するには多くのトレーニングや長い実務経験が必要です。システミングは、そのような”難しいシステムズエンジニアリング”を、誰でも実践できるようにつくられたフレームワークです。

システミングは、メソッド(やり方)・マインド(考え方)・プロセス(手順)などをまとめて、誰でも実行できるように体系化されています。システミングを使うことで誰でも同じように上手くシステムデザインを実行することができ、変化や複雑さに強い製品開発やビジネスを実現することができます。

システムデザインの難しさ

システミングの内容に入る前に、まずは「システムデザイン」についてお話したいと思います。ものづくりの現場で使われる「システムデザイン」は、「プロダクトやサービスを具現化するために様々な検討や準備を行い、計画を立てること」を意味します。

これは決して特別な活動というわけではありません。多くの企業で日々行われていることですし、設計開発などの部署で働く人だけでなく経営・営業・オペレータなど様々な立場の人が何らかの形で携わっている活動です。

このように誰もが取り組んでいるシステムデザインですが、それがいつも上手くいくとは限りません。特に対象とするプロダクトやサービスが複雑で、状況の変化が大きいとき、システムデザインはとても難しくなります。

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システムデザインを難しくしているのは、様々な「わからない」と、わからないを生み出す「複雑さ」です。まずは、様々な「わからない」について考えてみましょう。以下にシステムデザインをやってみるとよく遭遇する「わからない」を挙げてみます。

①他人の頭の中はわからない (認識ギャップ)

当然のことですが、他人が何を考えているかを正確に知ることはできません。同じシステムを対象にして議論していても、人によってシステムのイメージや詳細が異なっていて問題が起きることがよくあります。また、顧客やユーザーが本当に求めていることを正確に知ることもできません。

  • チームメンバーの間で、システムに対する認識が異なっている。
  • 開発者は使いやすいと思っているけど、ユーザーは使いづらいと思っている。

②何がおきるかわからない (リスク)

モノゴトを事前に完全に予測することは不可能です。「もしかしたら起こるかもしれない」といったことや「結果がどうなるかわからない」ということが必ずあります。そのような”わからない”はリスクとなります。

  • 部品が故障してしまうかもしれない。
  • ユーザーが誤った操作をしてしまうかもしれない。

③何がわかっていないかがわからない(無知)

システムに関する全ての要素や可能性を漏れなく認識して列挙することはとても難しいことです。特に、はじめてつくるシステムであったり、その領域について詳しくない人がデザインに取り組む場合は、様々なものを見落としてしまいます。この”わからない”がやっかいなのは、わかっていないことに気づくことが難しいということです。

  • 重要だけど見落としていたステークホルダが存在した。
  • DCモータの動作によって磁気センサが影響を受けることを知らなかった。
  • 顧客が言っていることが事実ではなかった。

④わからないやってみないとわからない(曖昧さ)

システムデザインを進めていく上では「具体化してみないとわからない」や「つくってみないとわからない」という場面が数多くあります。最初は曖昧なものでも、一度それで仮決定として詳細化や具体化を進めてみると、はじめて問題点やあるべき姿に気づき、仮決定だった曖昧な箇所まで戻って修正することができます。

  • 画面のプロトタイプをつくってみたら、表示件数を絞り込む機能が必要であることがわかり、機能リストに追加した。
  • 使用する部品を決めることで初めて故障に関するリスクを見積もることができた。

⑤変化に対してどう対処したらよいかわからない(適応)

システムデザインに変化はつきものです。1~4で挙げたような”わからない”が原因となって後からシステムのあるべき姿が変わったり、外部の環境が変化することで大きな影響を受けたりします。ある部分の変化が、他の部分にどのような変化をもたらすかが分からないことも多くあります。システムデザインを上手く実践するためには、変化に上手く対処する必要もあるのです。

  • 使用する予定だった部品が廃盤になってしまって異なる部品を選定したけど、その変更がシステムにどのような影響を及ぼすのかわからない。
  • イートインを前提として飲食店向けのシステムを開発したが、テイクアウトやデリバリーにも対応しなければならなくなった。

「システミング」では上記のような”わからない”と、その原因となる”複雑さ”がシステムデザインを難しくすると考え、それを乗り越えるための方法を提案しています。

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基本的なアプローチ

システムデザインを難しくする様々な「分からない」と、それを生み出す「複雑さ」に対処するためには何が必要でしょうか? システミングでは、それらの問題に対する基本的なアプローチとして「システム思考」と「システミング3原則」を挙げています。

システム思考

システム思考とは、モノゴトをシステムとして捉えることで複雑な状況や問題を理解するという考え方です。システムとは、次の3つの性質を備えているものと定義することができます

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システム思考

システミング3原則

原則1:分けて考える

原則2:整合性を保つ

原則3:わからないを意識する

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システム思考とシステミング3原則がどのように「5つのわからない」を解決するのか?

「システム思考」と「システミング3原則」の詳細については無料のガイドブックをご覧ください。

ビューとモデル

システミングにおいて重要な概念である「ビュー」と「モデル」について説明します。

複雑なシステムの全体をそのまま考えたり理解したりすることは困難なので、システムデザインを進めるときには、システムの一部や特定の側面を切り取って表現する必要があります(システミング3原則の原則1:分けて考える)。

システムをつくるときは、チームメンバー同士や顧客と開発者の間でシステムに対する認識を合わせることが重要です。どんなシステムをつくっているのか(つくるべきなのか)について認識が揃っていないまま設計や実装を進めてしまうと、意図通りに動作しないシステムや、顧客から見て役に立たないシステムができあがってしまいます。

しかし、人は複雑なシステムの全体をそのまま理解することはできないので、システムに対する認識を合わせるためには工夫が必要です。そこで登場するのが、ビューやモデルです。ビューで切り取ってモデルとして表現することで、人はシステムの部分的な姿を理解することができるようになります。すると、チームメンバーや顧客との間で、少なくともそのビューで切り取った側面や部分については認識を合わせることができます。

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システムモデルの例

システミングでは、上記のようなビューとモデルの概念をより実践の場で使いやすいように「ビューモデル」というフレームも用意しています。 ビューとモデル、そしてビューモデルの詳細については無料のガイドブックをご覧ください。

システミングのプロセス

続いて、実際にシステミングをどのように進めていくためのプロセスの概要を説明します。システミングにおいてビューモデルと並んで重要なフレームであるマイルストーンについて基本的な事柄を説明します。まずはシステミングの全体のプロセスについて見ていきましょう。

全体プロセス

システミングを使ってシステムデザインを進めていくときの基本的なプロセスは、以下の4つのステップになります。


Step.1 システム開発を企画する

Step.2 ビューモデルとマイルストーンをつくる

Step.3 マイルストーンに沿って設計活動を進める

Step.4 振り返って改善する


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マイルストーン

プロジェクトマネジメントの分野ではマイルストーンは「プロジェクトにおける重要な節目やイベントのこと」と定義されます。システミングにおけるマイルストーンと一般的なマイルストーンは概ね一致しますが、システミングではマイルストーンの目的とマイルストーンが対象とするビューを明記することが特徴です。

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上のマイルストーンのイメージ図では、3つのマイルストーンが順に表現されています。それぞれのマイルストーンにおいて濃い色で表示してある部分が対象のビューです。それぞれのマイルストーンでは、対象ビューから見たモデルをつくっていくことになります。このとき、単に順番にモデルをつくるだけでなく、整合性を確認しながら各モデルを行ったり来たりして少しづつブラッシュアップさせていきます。

また、システミングにおけるマイルストーンには目的を設定する必要があります。目的の記述も含めて、別途以下の雛形に沿って整理しておきましょう。 f:id:etu619:20210923171624p:plain

具体例として、ソフトウェア設計に取り組む場合のマイルストーンの一例を示します。 f:id:etu619:20210923171704p:plain

システミングのプロセス、マイルストーンの表現方法についての詳細は無料のガイドブックをご覧ください。

まとめ

システミングの定義や基本的な知識、実践方法についての概要をご紹介させていただきました。システミングのフレームワークについてイメージがわきましたでしょうか?

システミングについてより詳しい内容を知りたい方は以下のガイドブックを無料でダウンロードいただけます。ぜひシステミングの実践にお役立てください。

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また、レヴィでは、これまで蓄積してきたシステムデザインに関するノウハウをもっと多くの人に届けて体験してもらうための機会として、オンラインセミナーシリーズ「システムデザインの学校」を開校しています。無料セミナーとなっていますので、こちらもぜひご活用ください。

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