「ガイドブックのガイド」では、システミングガイドブックの要点や補足、具体例や関連する話題、制作や議論の裏話などをブログで紹介していきたいと思います。
システミングガイドブックは下記のリンクより無料でダウンロードすることができます。 levii.co.jp
今回は
とても光栄なことに、著名なエンジニアの方が主催する勉強会にて、システミングガイドブックとその姉妹編であるシステム思考ガイドブックを参考資料としてご利用頂くことになりました。概要は下記の通りです。
- イベント名:システム思考を体験してみよう
- 主催:きたのしろくま氏(ソフトウェアプロセス改善手法「SaPID」の開発者)
- 実施日時:2021年2月24日(水) 19:00〜21:00
- 形態:オンライン(zoom)
- 詳細はこちら ※イベント終了後はリンクが切れる可能性があります
システム思考をテーマとした勉強会で使って頂くことになったので、今回はシステム思考の第一歩である「対象をシステムとして考える」ということについて考えてみたいと思います。どちらかと言うと姉妹編のシステム思考ガイドブックの内容ですが、システミングの大前提とも言える重要な考え方です。
システムとは?
システミングでは、システムデザインの対象となる「システム」を次のように定義しています。
システムとは、次の3つの性質を備えているモノゴトのことである
- 多数の要素を持つ
- 要素同士が相互作用を持つ
- 目的がある
実はシステム思考ブックでは少し書き方が違っていて「多数の要素が集まって目的を果たす」「要素同士が相互作用を持つ」「時間の経過に伴って変化、動作する」としていました。言っていることはほぼ同じなのですが、「目的がある」という部分がとても重要なので、強調するようになりました。
目的がある/ない
システミングではシステムデザインを「目的と、それを実現するシステムをどうつなげるか?を考えること」と定義しているので、目的がなければシステムデザインの対象とはなりません。逆に、システムデザインに取り組む際には「システムには目的がある」ということを忘れずにいることが大切です。ごくあたり前のことですが、システムの詳細や実装を考えているときにはつい忘れがちなことだったりします。
ここでいきなりですが「太陽系」を考えてみましょう。英語で言うと「ソーラーシステム」なので「太陽系はシステムだよなぁ」と思うかもしれません。しかし太陽系の目的って何?と考えると、(一般的には)目的はないように思えます。そのため、太陽系はシステミング的にはシステムではありません。
ここで注意が必要なのですが、もしかしたらこの世には神様のような存在があって、神様から見たら太陽系には何かしらの目的があるのかもしれません。また、太陽系に何かの役割(例えばエネルギー源としての役割など)をアサインして太陽系を含むとても大きな装置を考える場合は、太陽系に目的が設定されます。このような場合は、太陽系はシステムであると言ってよいでしょう。
他にも微妙なラインとして「蟻はシステムか?」「自分(人間)はシステムか?」などを考えはじめると、面白いような面倒くさいような気持ちになってきます。蟻は「生存して、子孫を残すことを目的としている」と考えればシステムであると考えることができるし、「繁殖も含めてただの自然現象であって目的などない」と考えればシステムではないということになります。
次の図はレヴィが実施するセミナーで「システム」について考える時に使っているスライドです。それぞれシステムかそうでないかを考えてみましょう。そのためには「多数の要素を持っていると言えるか?」「目的を持っているか?」などを考えてみるとよいです。
システムか、システムでないか
ここまでに見てきたように「目的を持っているか?」を軸に考えると、宇宙も蟻も「システムである」と考えることもできるし「システムでない」と考えることもできます。実は、他の全てのモノゴトも同じように考えることができます。
さらに「多数の要素を持っているか?」を軸に考えた場合も同じようなことが起きます。どんな<モノ>を考えても、要素に分けようと思えばいくらでも分けることができます。<コト>についても同じです。すると「多数の要素を持っているか?」という問いは意味がないように思えてしまいますが、そんなことはありません。要素に分けるか、要素に分けないか、何を要素と考えるか、によってシステムと考えてもよいし、システムではないと考えてもよいのです。
つまり「システムか、システムでないか」というのは正解・不正解があるようなものではなく「システムとして考えることもできるし、システムとして考えなくてもよい」という感じのものなのです。要は「システムか、システムでないか」はモノゴトの捉え方次第なのです。
システムデザインの第一歩は対象をシステムとして捉えることです。システミングにおける定義を用いて「これはシステムである」と考える場合には、その対象は必ず要素や相互作用や目的を持ちます。それらを様々なビューから見て表現して、目的を実現するためのシステムのあり方を考えていくことがシステミングです。
注意点
ここまでの議論は、あくまでも「システミングにおけるシステムの定義」を出発点にしたものです。システムの定義によっては「太陽系はいつ誰が見てもシステムである」と言えるかもしれません。
今回のまとめ
- システミングにおけるシステムの定義は「多数の要素を持つ」「要素同士が相互作用を持つ」「目的を持つ」
- 「システムか、システムでないか」はモノゴトの捉え方次第
- システムデザインの第一歩は、対象をシステムとして捉えること
ガイドブックのガイド
- (1)読み飛ばし方
- (2)冊子版と姉妹編
- (3)システムか、システムでないか
- (4)サルNASAとシステミング