株式会社レヴィ ブログ

システムデザインで価値を生み出す、株式会社レヴィの公式ブログです。

羅針盤 Vol.10 「絵の力」

Imagination is more important than knowledge. Knowledge is limited. Imagination encircles the world.
(空想は知識より重要である。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む。)
アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)
(19-20世紀 ドイツの物理学者。1879~1955)

こんにちは、システムデザイン研究所(SDL)のともです。 前回に続き、アインシュタインの言葉連投です 笑。

 せっかくですから、含蓄深い言葉を残しているアインシュタインのことを少し調べてみました。 現代を代表する、いや人類史上最も偉大な物理学者であることは言うまでもありません。奇跡の26歳と呼ばれる1905年に「光量子仮説」、「ブラウン運動」、「特殊相対性理論」に関する論文を、その後1916年に「一般相対性理論」を発表しています。怒涛のように輝かしい業績を残しただけでなく、社会や文明、文化にも大きな影響を与えています。
そんなアインシュタインですが、幼少期なかなか言葉を話すことができなかったことや、生涯バイオリンを大変愛していたこと、また日常的に発する言葉はかなり雰囲気的なものが多かったなど、さまざまな逸話が残っています*1。特に、イメージというか写真でもみているように事象を捉え思考していたことは有名だそうで、若い頃のアインシュタインに、友人が「何を考えているの?」と尋ねたところ、彼は「光の上に乗って宇宙を旅している」と答えたとか。
しかし、一方でこうしたイメージを基に理論を構築するに当たっては、精緻なまでの「思考実験」を重ねているわけであり、視覚に入った情報や脳の中で結像したイメージをそのまま投影しただけのものではありません。この辺りが天才のなせる技と言えるのでしょう。

 さて、前置が長くなってしまいました。先日、ピクトグラムの話*2を書いたあと、続きで考えていました。私の問いはこれです。

「非常口のサインを見た時に、人はどんな風にそれを知覚し行動に移すのだろうか」
そして、
「(もちろん皆が助かるように行動するわけですが、)人によって行動が違ってくるのはどういうことなんだろうか」と。

いつ非常口のサインを見ているのかで随分と答えは変わりそうですが、色々と思考のバリエーションはありそうです。

  • 「ここに非常口があるんだなあ。ここにきたら避難できる。」
  • 「ここに非常口があるから、ここに向かうよう周りの人たちに声をかけるぞ。」
  • 「ここに非常口がある。なら消火器やスプリンクラーはどこにあるんだろう。」
    などなど。

 火事になった後の行動は消火活動をするにせよ、避難するにせよ、迅速な行動を必要とします。日本生まれの非常口ピクトグラムは「ここに非常口がありますよ」というメッセージを容易に伝えることができます。人に「非常口」を知らせている点で随分と時間短縮に貢献しています。人の思考と行動はこの後色々なバリエーションを作り出します。消火活動するのかそれとも避難支援するのか、はたまた避難するのか。どれもが選択肢の中にあります。その建物の詳細な構造や消火作業に関する知識、そして発火物についての知識などが十分にある人なら、そのあたりを一気に分析処理して対応を決めることができるのでしょう。このような人は視覚的に物事を捉える特性、さらに言えば対象物を精緻に捉え処理する物体視覚思考という特性を持っている可能性があります。

どういう行動を取ることが尊いのかを語っているわけではなく、皆の命が助かり、被害が小さくなることが優先されるべき課題です。この課題を解決するために、こうした認知と行動を実効性のあるものにするには、事前に建物の避難経路が確保されていたり、想定される火事に対応できる消火器やスプリンクラーの設置、さらには建物を施工するに当たってそれらを設計に取り入れるよう法律や規則を制定してあること、などの準備が必要です。どこに消火器やスプリンクラーを設置するべきかを設計したりするためにも視覚的な能力はとても機能的に働きます。こうしたことを得意とする人は空間視覚的思考を持っている可能性があります。また、それらを規則として制定し皆に知らせたりさらには実効性の高いものとしてそれを管理するには、文章などにより言語化を伴います。そうした作業を得意とする人は言語思考を持っている可能性があります*3
このあたりを図示してみると以下のように示せます。

非常口のサインと火災対応

この話はシステムズエンジニアリング的な視点からみると以下のように捉えることもできそうです*4

知識と経験を駆使して消火や避難支援をする人:データレイヤ〜主として機能レイヤ〜システムインテグレーションレイヤ
非常口や消化器を設置すべきかを設計レイアウトした人システムインテグレーションレイヤ
建物の施工や運営について法律や規則を制定した人マネジメントレイヤ

システムズエンジニアリングとプロジェクトマネジメント

 こうしてみると、視覚的な思考と言語的な思考がうまく噛み合い一つのシステムを作り上げることで、創造的に物事が進んでいくことがわかります。ここで重要なことは、ビジュアライズした情報を共有することで、言語的な方向からも視覚的な方向からも理解しやすくかつ説明しやすいということです。火災現場であれば一刻を争う中で、時間を短縮できるという効果がありますし、新たな製品やサービスを作る上では生産効率を高めなおかつ時間を短縮できると言えるでしょう。

 かのアルバートアインシュタインは類まれな物体視覚思考を持つ人であったと言われています。本来の意図とは違いますが、彼が残した「神はさいころを振らない」という言葉は、物体視覚思考の賜物だったのかもしれませんね。

追記)

  • このコラムで言う「視覚的」とは、「目で見る」という意味ではなく、「事象を絵や映像といった視覚的情報として捉える」という意味です。

  • アインシュタインは物体視覚思考に加えて空間視覚思考を持っていたとも言われています。

  • 大規模な火災で物体視覚的思考で被害を小さくできた例はいくつもありそうです。例えば糸魚川で起こった火災*5では、地元の方の機転から消火活動の困難を乗り越えたと言う報道がありました *6