この記事では、「サルでもわかるNASA式システム開発」ガイドブックのポイントを抜粋して紹介しています。全文をお読みになりたいかたはこちらから無料ダウンロードしていただけます。
「相手に自分のぬくもりを伝えたいと思っても、身を寄せれば寄せるほど体中のトゲでお互いを傷つけてしまう。人間にも同じことが言えるわ。」
新世紀エヴァンゲリオンの第参話で、赤木リツコ博士が「ヤマアラシのジレンマ」の話をしています。
システム設計にも、そんな悲しいジレンマがあります。
製品やサービスを作っていく上で、パフォーマンス(品質、性能)、コスト、リスクは、常に高い関心ごとです。
パフォーマンスはなるべく高くしたい一方で、コスト、リスクはなるべく低く抑えたい。
その願望は常に打ち砕かれることになります。
ヤマアラシが付かず離れずの距離に落ち着くように、システムもパフォーマンス、コスト、リスクがバランスするところに落ち着きます。
NASAのハンドブックでは、システムズエンジニアのジレンマ*1として、次のように説明されています。
- 一定のリスクで、コスト*2を削減するには、パフォーマンスを低下させる必要があります。
- 一定のコストでリスクを軽減するには、パフォーマンスを低下させる必要があります。
- 一定のパフォーマンスでコストを削減するには、より高いリスクを受け入れる必要があります。
- 一定のパフォーマンスでリスクを軽減するには、より高いコストを受け入れる必要があります。
例えば、ハイリスク・ハイリターンで良いならば、コスト削減はできますが、ローリスク・ハイリターンを求めるならば、コスト削減はできません。
同様に、パフォーマンスの向上させることとリスクを減らすことは、共にコストを消費するので、コストを固定してしまうと綱引きになります。
また、リスクを取ることなく、パフォーマンスの向上とコスト削減を両立させることはできません。
叶う願いは3つではなく、2つまでなのです。
冷静さを失って、このジレンマを忘れた意思決定をしてしまうプロジェクトは実は多いのではないでしょうか。 (そしてプロジェクト末期にその意思決定が間違っていたことに気がつく)
かくいうNASA自身でさえ、”Faster, Better, Cheaper” (より早く、より良く、より安く)というスローガンを掲げていたことがありました。*3
3つを共存させることは不可能ではありませんが、非常に困難であり、ゲームのルールを変えるような革新的な発想が必要になります。