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サルでもわかるNASA式システム開発 第2話 「理想なき者に計画なし」

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吉田松陰

夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。

幕末の志士に大きな影響を与えた教育者、吉田松陰の言葉です。

「計画なき者に実行なし」ということで、製品開発の現場では、開発計画が必ず作られますが、そこで登場するのが、ガントチャートです。

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ガントチャートの例(旧NASA SE Handbookより)

ヘンリー・ガント氏が生み出して以来、100年以上にも渡り、ガントチャートは様々な現場で使われて来ましたが、多くのマネージャ、エンジニアに失敗体験も与えてきました。

ガントチャートによる管理がうまくいかない主な理由は、作業に抜け漏れがあることと作業の見積が不正確であることです。

NASAでは、どのように考えているのか見てみましょう。

プロダクトを生み出すための技術面での計画を、NASAでは、技術計画(Technical Plan)と呼んでいます。

The Technical Planning Process, the first of the eight technical management processes contained in the systems engineering engine, establishes a plan for applying and managing each of the common technical processes that will be used to drive the development of system products and associated work products. This process also establishes a plan for identifying and defining the technical effort required to satisfy the project objectives and life cycle phase success criteria within the cost, schedule, and risk constraints of the project.

最初の文で述べていることは、プロダクトの開発に必要な作業を洗い出し、着実に実行できる計画を立てましょうということで、至極当たり前のことです。

次の文で述べられていることが非常に大切です。

必要な技術的作業を特定し、定義するための計画も確立

つまり、プロジェクトの初期の段階では、何をすべきかを完全に洗い出すことは不可能なので、「必要な技術的作業を特定する」ための計画も一緒に立てるべしと述べています。

吉田松陰の言葉を思い出してください。

理想なき者に計画なし

システム(プロダクト)のあるべき姿が見えないと、実行性のある計画は立てられません。

そこでNASAでは、Pre-Phase Aという段階を設け、「システム(プロダクト)のあるべき姿」を追求することを開発計画に含めることを推奨しています。

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NASAのシステムライフサイクルモデル

上の図のように、NASAでは、システムの一生(システムライフサイクル)を7つの段階に分けています。*1

  • Pre-Phase(コンセプト検討)
  • Phase A(コンセプト開発)
  • Phase B(基本設計)
  • Phase C(最終設計・製造)
  • Phase D(システム統合・試験・打ち上げ)
  • Phase E(運用・保守)
  • Phase F(運用終了)

再び、ハンドブックの言葉を参照してみます。

This effort starts with the technical team conducting extensive planning early in Pre-Phase A. With this early planning, technical team members will understand the roles and responsibilities of each team member, and can establish cost and schedule goals and objectives.

宇宙開発らしいところで、最初はトップダウンで役割と責任を明確化し、その上で各チームメンバーが動き出すことになります。

From this effort, the Systems Engineering Management Plan (SEMP) and other technical plans are developed and baselined. Once the SEMP and technical plans have been established, they should be synchronized with the project master plans and schedule. In addition, the plans for establishing and executing all technical contracting efforts are identified.

初期の段階では、プロジェクトの都合は一旦置いておき、システムに焦点を当てた計画を立てます。

それをシステムズエンジニアリング管理計画や技術計画と呼んでいます。

しかし、それだけでは、プロダクトの完成が遅すぎたり、コストがかかりすぎてしまうので、要所要所で、プロジェクト全体のゴールやスケジュールと同期をとります。

つまり、プロジェクトマネジメント活動とシステムズエンジニアリング活動は、プロダクトを成功裏に生み出すための前輪と後輪になっているわけです。

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プロジェクトマネジメントとシステムズエンジニアリング活動は協調する

ガントチャート」という言葉を聞くと、プロジェクトマネージャーの仕事というイメージが強いかもしれませんが、実際には、エンジニアの仕事があってはじめて、実効性のある計画を立てることができます。

次回は、「技術計画を上手く立てるコツ」について書きたいと思います。

この記事に関連するNASA

www.nasa.gov

blog.levii.co.jp

*1:JAXAも同じような方式で衛星開発を行っています。 https://solar-c.nao.ac.jp/schedule.html