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サルでもわかるNASA式システム開発 第4話 「システムを知る者は勝ち、知らざる者は勝たず」

この記事では、サルでもわかるNASAシステム開発」ガイドブックのポイントを抜粋して紹介しています。全文をお読みになりたいかたはこちらから無料ダウンロードしていただけます。

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孫子兵法

「これを知る者は勝ち、知らざる者は勝たず。」

孫子の兵法にこんな言葉があります。 敵のことをよく知ることが、戦いに勝つ上で重要だと。

システムデザインも一種の戦いであり、「プロダクトやサービスのことをよく知ること」が大切です。

プロジェクトの総コストは、設計の段階で8割近くが固定化されると言われています。

下の図は、模式的なものですが、NASAのプロジェクトにおいて、各ステージでどれくらいのコストが確定し、また実際に費やされるのかを表現しています。

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ライフサイクルコストに対する各開発段階での意思決定の影響

例えば、設計ステージでは、コスト(リソース)の15 %が費やされるだけですが、この段階で全体のコスト(ライフサイクルコスト)の75%が決まります。 なぜなら、システムの設計方法によって、テスト、製造、統合、運用、および維持にかかる費用が決まるからです。 逆に、これらのコストが決まっていなかったとしたら、後半のステージにおいて、重大なコストリスクが発生します。

後半のステージになると、設計変更のコストが増加することにも注意が必要です。 もし、初期のステージでテストや分析を一切行なわず、検証ステージではじめて問題を発見するという状況になった場合、再設計と再検証に多大なコストがかかることになります。

また、別の資料からの引用になってしまいますが、NASAのプロジェクト調べた結果、初期段階での設計活動に時間を費やす方が、コスト超過やスケジュール遅延を防げているという結果が出ています。

NASAのWerner Gruhl氏*1が1970-80年代に実施された32の主要プロジェクトを分析したところ、ほとんどのプロジェクトが初期段階(プロジェクトを定義する段階)で10%未満のリソースしか費やさず、結果、ほとんどの場合において40%を大幅に超えるコスト超過が発生していました。

この研究の結果、設計フェーズで15%程度のリソースを割くのが理想的だということが分かり、今日のプロジェクトでは、プロジェクトを定義する段階に十分な時間を費やすようになりました。 *2

これをレヴィ式に表現すると、システムデザインをきちんとやると、プロジェクトのQCD*3が向上するということになります。

NASAのプロジェクトでは、設計フェーズで15%程度のリソースを割くのが理想的と言われていますが、プロダクトやサービスの性質によって、この比率は変わってきます。

レヴィでは、様々なプロダクトやサービスに適したシステムデザインのノウハウを「システミングのKATA」として整理し、活用しやすい形で提供することを行なっています。

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最後に、そうは言っても、ブラックスワン的な出来事がプロジェクトの後半で起きて、スケジュールの遅延やコスト超過が生じることもあるという事例を紹介します。

気象衛星NOAA N-PRIMEの開発では、試験中に衛星が横転して、損傷するという事故が起きました。

作業員が衛星を固定していたボルトを取り外したことを記録せず、また別の作業員はボルトがあることを確認せずにカートを動かしてしまい、数百億円かけて開発した人工衛星がまさかの横転。 衛星の修理費用は1億3500万ドルもかかったそうです。

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気象衛星NOAA N-PRIMEの横転事故

戒めとして、人工衛星開発の中で、よく紹介される失敗事例です。

この事例は徹底的に調査され、詳細なレポート*4も出ています。

作業員のミスといった表面的な話に止まらず、「なぜこのようなミスが起きたのか」という本質的な原因を考えるのがNASAの偉いところだと思います。

このような失敗の蓄積が、NASAのハンドブックの元になっています。

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*1:Eric C. Honour, Understanding the Value of Systems Engineering, 2014

*2:NASA Assessments of Major Projects, 2018

*3:QCDは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字で、生産管理やプロジェクトマネジメントにおいて重視される指標です。

*4:the NOAA N-Prime Mishap Investigation Final Report, 2004