プロダクト開発や組織の問題解決など、様々な場面で役立つ「システムデザイン」。 しかし、いざ現場で実践しようとするとどこから手を付けていいのか?と迷われるかたも多いようです。
システムデザインの手法をものづくりの現場に活かしたい。 気にはなっているけれど、なかなか現場で実践するのは難しい…。
そんな、システムデザインの実践に興味があるけれど、まだ一歩踏み出せていないかたに是非お勧めしたいのが、無料オンラインセミナー「システムデザインの学校」です。 短い時間で手軽にシステムデザインを学ぶことができる、実践型セミナーです。
この記事では、10月に開催された「システムデザインの学校(ベーシッククラス・秋)」の内容をご紹介します。
システムデザインの学校で学べる内容は?
講師はシステム設計の人材育成やツール提供を手がける株式会社レヴィCEOの南部と、システムデザイン研究所所長の三浦です。二人とも人工衛星開発にルーツがあります。
【講師: 南部 陽介】
株式会社レヴィのCEO。元・大阪府立大学工学研究科助教。博士(工学)。 超小型衛星OPUSAT「こすもず」、後継機「ひろがり」の開発責任者を務め、人工衛星2機を打ち上げた。趣味は料理。「味とコストとインパクトを考えながらシステムデザインクッキングをしています。」
【講師: 三浦 政司】
株式会社レヴィ共同創業者。元・鳥取大学学術研究院工学系部門准教授。博士(工学)。 レヴィではシステムデザイン研究所の所長としてシステム設計論の研究などに取り組む。「今日はノウハウをたくさん伝えていきたいと思います」
なぜ、ものづくりの現場でシステムデザインが必要なのか? [プレゼン 30分]
まずはCEOの南部から、ものづくりの現場でシステムデザインが求められるようになった背景と、システムデザインの考え方を活用してどのように課題を解決することができるのかをプレゼン形式で紹介しました。
新規事業、組織改革、DXプロジェクト、製品開発など、ものづくりのプロジェクトには想定外のリスクがつきものです。納期に間に合わない、顧客の要求と違ったものができてしまった、手戻りが多い・・なぜこんなにも失敗が起こってしまうのでしょうか?
理由の1つは、ものづくりの世界がどんどん複雑になってきていることです。例えば自動車業界を例に挙げると、電気自動車、自動化、配車システムなど、複数のシステムを複合的に見ていく必要があります。システム オブ システムと呼ばれる領域ですが、この複雑なプロジェクトを進めていくために「システムズエンジニアリング」の重要性が高まっています。
このようなプロジェクトでは、専門家を集めただけでは成功できず、専門家の共同をどううまく進めていくかが大事になります。しかし、「システムズエンジニアリング」の重要性が高まっている一方でその活用は難しく、理論を理解している大学の衛星開発の現場でさえ上手く活用できているとは言い難い状況です。
レヴィでは、このすごく有用だがすぐに現場で活用するのが難しい「システムズエンジニアリング」を、誰もが活用しやすい形で広げていきたいという思いで「システミング」というフレームワークを開発しました。
ものづくりのプロジェクトで失敗が起きてしまうのは、システムに対する認識のずれが原因です。レヴィでは、システムを可視化することですりあわせの場を提供することで分断の解消ができると考えています。
今回のセミナーでは、「どのようにシステムを可視化するのか?」という部分について、デモとワークショップで実際にモデル図を書きながらご紹介していきます。
アプリ開発の事例をもとに、モデル図の作成・解説 [デモ 30分]
まず、傘判断アプリ開発の事例をテーマに、システムを可視化する「モデル図」を書いてみます。モデル図を書くツールとして、レヴィが開発したモデリングツール「Balus」を利用します。
システムを可視化する方法はいろいろありますが、重要なポイントは「メンバーが情報を共有できる場があること」と「共有の方法が定型化されている」ことです。
たとえば、ホワイトボードに集まって議論を進めていく方法は、「場があるけれど、定型化されていない」方法です。その場では情報共有しやすく認識をあわせやすいですが、後から参加したひとは内容を正確に理解することができません。
一方で、仕様書ドキュメントでの共有は情報を正確に伝えることはできますが、ドキュメントでは話し合う余地がないため、定型化されてないことを議論できる場がありません。
モデリングツール「Balus」は、オンラインで複数人で同時編集して議論を進めるこができ、システミングのフレームに沿った定型化されたフォーマットで情報を共有することができます。今回はこのBalusを使って、参加者のみなさんと一緒にシステムモデル図をかいてみます。
まずは、傘判断アプリをテーマに作成したモデル図をサンプルとして紹介します。
【傘判断アプリ】
●場面・困りごと
小学生の子どもがいる家庭
子どもが登校するときに傘を持たせるべきか迷う&間違えることが多い
●アイディア
その日の下校時の天気予報データから傘の不要/必要を判定して教えてくれるアプリ
このアプリを開発する際に、システムの認識をあわせるための3つのモデル図を作成しました。
1)コンテキストモデル
2)価値(状態変化)モデル
3)業務フローモデル
それぞれのモデルを、具体例をもとに解説していきます。 この際、どの視点でシステムをみるべきか、どのモデルを使うのか?というところがポイントになります。
自分で考えたアプリのアイディアをモデル図で書いてみる[ワーク 30分]
傘アプリのサンプルでイメージを理解した後、参加者それぞれで「身近な課題を解決するアプリ」のアイディアをだし、アプリ開発に必要なシステムをモデル図で可視化するワークを実施しました。
【ワーク実施の手順】
①Balusの付箋ツールを使って、身近で解決したい課題のアイディアをだす
②アイディアの中から、参加者それぞれテーマを1つを選ぶ
③サンプルで作成した「傘判断アプリ」を参考に、Balus上に3つのモデル図を作成する
④作成し終わったら、3つのモデル図の相関関係を俯瞰し、抜け漏れがあれば追加する
⑤最後にそれぞれのモデル図をみて参考にする。
⑥難しかったところや悩んだところについて講師に質問・回答
どんなひとが参加している?
システムデザインの学校にはどんなかたが参加されているのでしょうか? 参加対象者は幅広いです。システムデザインの価値は理解しているけれど実際どう活用していいかわからない、という方に多くご参加いただいています。
実際に参加いただく方は、
・製造メーカーのマネージャー
・開発部の設計者
のかたが多いです。
また、ものづくりに関して、次のようなことに関心があるかたにお勧めです。
設計スキルを向上したい
設計人材の育成が難しい
チーム内の共通認識を揃えてパフォーマンスをあげたい
顧客とのコミュニケーションのズレを解消したい
上流設計や要件定義の質を向上したい
詳細設計や実装の質を向上したい
参加してみた感想
システムデザインの学校に参加した感想を紹介します。
システムデザインについては、ガイドブックを読んだだけの知識で参加しましたが、資料で読むだけでは腑に落ちていなかったところが体感で理解できました。デモをみせてもらって実際に活用するイメージがつきました。
もっと座学中心かと思ったけど、実際はワークが多かったし、ワークも簡単だったので参加しやすかった。
ある程度受け身でも参加できるが、実際のアプリ開発の事例をテーマにしたモデルを書いたりして実践的な内容だった。
手を動かしながら頭を使うインタラクティブなセミナー。インプットとアウトプットのバランスが良く、あっという間で楽しかった。
ワークショップがあるので緊張したが、基本は個人ワークなので人見知りでも安心だった。他のひとが考えたモデル図を参考にできたので引き出しが増えたのが良かった。
無料オンラインセミナー「システムデザインの学校」に参加するには?
今後も今回開催したベーシッククラスを定期的に開催していく予定です。 また、ベーシッククラスとは別に分野ごとにさらに詳しい内容をご紹介する専門クラスの開催も予定しています。
次回参加をご希望の方は、以下のメールニュースのご登録フォームに「システムデザインの学校 参加希望」と記載のうえご登録をお願いいたします。 次回の日程が決まり次第ご連絡させていただきます。
ご参加お待ちしています!