新型コロナワクチンの接種は「1日に100万回接種、7月末までに希望する高齢者への2回接種完了」といった非常に高い目標を掲げ、見事に達成したプロジェクトです。
学べることも多いのではないかと、河野氏がワクチン接種担当だった頃の施策をモデリングしてみました。
情報ソースは河野内閣府特命担当大臣記者会見要旨です。
明確な方針を持ち、それに基づき意思決定を行う
会見の内容を見ていると、
- システムの制約で接種に影響が出ることはあってはならない
- ワクチンを無駄にしない
- トレーサビリティを確保する
という3つの大方針を掲げ、その方針に基づき実行する施策の意思決定を行っています。
本プロジェクトの成功の要因は、関係者が自律的に動けるようになったことにあると思います。
ワクチン接種という取り組みに対して明確な方針を持ち、それに基づき意思決定を行い、また分かりやすいストーリーに変換して発信したことが、その状況を生んだと考えられます。
「利害関係者を特定し、コミットメントを引き出し、利害関係者が期待していることが何かを明確にする」というシステムデザインのコンピテンシーと通じるものがある点も面白いところです。
ワクチン接種プロジェクトの主な出来事も整理してみました。
失敗から学ぶ
プロジェクトは、大成功であったと思いますが、当然、全ての施策がうまく作用したわけではありません。
例えば、スピード優先で施策を進める方針を掲げて、接種券の送付を一斉に行いましたが、結果として、医療機関に予約の電話が殺到し、電話が繋がらなかったり、予約をとるのに1時間以上も待たないといけないという事態が起きました。 結果として、接種拡大のスピードは下がってしまったのではないかと思います。 こうした内容も会見で発表されており、反省のもと改善を繰り返し、よりより仕組みづくりへと活かすという姿勢が、プロジェクトの成功の要因となったことは間違いありません。
政策のリバースエンジニアリング
今回のモデリングは、記者会見要旨やニュース記事を漁り、その中から構造を見出すという作業でした。
これは、製品のリバースエンジニアリングと非常に似た作業です。
派生開発を繰り返した結果、全体像が分からなくなり、品質が保てなくなったり、新しい機能開発のコストが高くなってしまうという問題がよく起きます。
そんな時、製品の仕様書をベースに全体像のモデルを描き、そのモデルをベースに暗黙知を有する熟練エンジニアと対話を行い、製品のアーキテクチャを見出すということを行います。
今回のモデリングは、まさに政策のリバースエンジニアリングだったわけです。
このモデルは、形式知をもとに作られた仮説でしかないので、暗黙知のある方(今回の場合は河野太郎氏)との対話があると、さらに核心をついたモデルになっていきます。
*1:リンク先からモデルを閲覧可能です。https://bit.ly/tarobalus
*2:リンク先からモデルを閲覧可能です。https://bit.ly/tarobalus2
*3:リンク先からモデルを閲覧可能です。https://bit.ly/tarobalus3